石綿事前調査を漏らさない|外構・改修工事の対象判定と着工前実務

更新日: 7月 27, 2026

工事段階から調べる: 石綿事前調査困りごとから調べる: 石綿調査用途から調べる: 改修・補修・交換
既存の外壁とウッドデッキの取り合いを着工前に確認する調査者と現場監督の施工イメージ
着工前に、実際に触れる既存材料と工事範囲を照合する施工イメージ(AI生成)

石綿事前調査の要否は、工事金額だけでは決まりません。外構・改修工事で既存材料へ手を加える前に、対象範囲、対象外作業との境界、調査者資格、報告基準を切り分ける必要があります。

主な想定読者

施工管理者、現場監督、積算・営業担当者

この記事で確認できること

  • 事前調査が必要な工事と対象外作業の境界
  • 調査義務と結果報告義務の違い
  • 2026年からの工作物調査者要件
  • 未調査で着工した場合の初動

法令・行政情報の確認基準:2026年7月27日。個別工事では所轄労働基準監督署と自治体の最新案内も確認してください。

着工前に押さえる5つの結論

  1. 建築物・工作物の解体や改修では、原則として工事対象部分の石綿使用有無を事前に調べます。ただし、石綿を含まないことが明らかな単一材料を周囲へ損傷なく外す作業など、事前調査の対象外となる条件があります。
  2. 「事前調査」と「行政への結果報告」は別の義務です。報告基準未満でも、対象工事であれば事前調査は省略できません。
  3. 事前調査は書面調査と現地での目視調査を組み合わせます。石綿の有無が確定しない材料は、分析するか、石綿含有とみなして必要な措置を計画します。
  4. 建築物は2023年10月から、対象となる工作物は2026年1月以降着工の工事から、有資格者による事前調査が必要です。資格の範囲は対象物の区分で変わります。
  5. 調査結果、説明、必要な報告、現場備付け・掲示がそろう前に、未確定材料の切断・穿孔・撤去へ進みません。追加工事が生じた場合も、触る範囲を広げる前に再判定します。

「外構工事だから対象外」とは限らない

判断の起点は工事名ではなく、実際にどの材料へ、どの方法で手を加えるかです。デッキの更新でも、既存外壁への穿孔、軒天の撤去、外壁仕上塗材の除去、設備配管まわりの改修が含まれれば、建築物や工作物の既存材料が調査対象に入る可能性があります。

事前調査の対象外となり得る作業

厚生労働省と環境省の解説では、次のような作業は、石綿等の粉じんが発散しないことが明らかで「解体等の作業」に該当しない場合、事前調査を要しないと整理されています。

  • 木材、金属、石、ガラスなど、石綿を含まないことが明らかな材料だけを、周囲の材料へ損傷を与えずに手作業や電動ドライバー、ボルト・ナットの取り外しで除去する作業
  • 釘を打つ、既存の釘を抜くなど、材料へ極めて軽微な損傷しか与えない作業
  • 既存材料を除去せず、既存塗装の上への塗装など、新しい材料を追加するだけの作業
  • 関係省庁の確認により石綿が使用されていないと整理された特定の工作物・作業
対象外条件を広く解釈しない
既存壁、軒天、成形板、仕上塗材などへ電動工具で穴を開ける作業は、軽微な損傷の対象外には含まれません。木製デッキ本体を外すだけの計画でも、壁付け金物やアンカーの撤去、追加穿孔まで含むなら、工事範囲を分けて判定します。

調査義務と結果報告義務を分けて確認する

行政への結果報告には規模基準がありますが、その基準は事前調査を行うかどうかの線引きではありません。報告対象外の小規模工事でも、事前調査の対象となる解体・改修作業なら調査が必要です。

工事区分 結果報告が必要となる基準 実務上の注意
建築物の解体 解体部分の床面積合計が80平方メートル以上 石綿の有無にかかわらず報告。面積基準未満でも対象作業の事前調査は別途必要
建築物の改修 請負金額が税込100万円以上 模様替え、修繕、建築設備の設置・修理・撤去も改修に含まれ得る
特定の工作物の解体・改修 請負金額が税込100万円以上 報告対象となる工作物の範囲と、事前調査者資格の区分を別々に確認

一定規模以上の工事は、元方・元請事業者が石綿事前調査結果報告システムを通じ、労働基準監督署と自治体へ報告します。建築物と工作物が混在する工事、分割発注、契約変更で金額が変わる工事は算定を自己判断せず、所轄窓口へ確認します。

2006年9月以降の建築物でも記録は必要
新築工事の着工日が2006年9月1日以降であることを設計図書等で確認する方法は、事前調査の方法として認められています。ただし、報告基準に該当する工事では、石綿なしの場合も結果報告が必要です。

着工判定までを7段階で管理する

1 工事範囲を固定

見積、図面、現況を照合し、切断・穿孔・撤去する材料を洗い出す。

2 対象区分を判定

建築物か工作物か、対象外作業に該当するかを根拠とともに記録する。

3 調査者を選定

対象物と工事着工日に適合する資格を確認する。

4 書面・目視調査

設計図書、改修履歴、製品情報と現地の材料を突き合わせる。

5 材料ごとに判定

石綿あり・なし・不明を整理。不明は分析または含有みなしへ進む。

6 説明・報告・掲示

発注者説明、必要な行政報告、現場備付けと掲示を完了する。

7 変更時に再判定
解体後に見えた材料、追加穿孔、別工種の追加などで対象範囲が変わったときは、その部位へ触れる前に調査範囲と報告要否を見直します。口頭指示だけで作業を先行させません。

有資格者の区分は対象物で確認する

調査対象 主な資格区分 確認ポイント
建築物 特定・一般建築物石綿含有建材調査者など 1戸建て等石綿含有建材調査者は、1戸建て住宅・共同住宅住戸の内部に範囲が限定される
告示で定める特定工作物 工作物石綿事前調査者、一定の建築物調査者など 工作物の種類ごとに認められる資格が異なるため、一覧表で照合する
特定工作物以外の工作物 工作物石綿事前調査者 塗料その他の石綿使用のおそれがある材料の除去等に限って資格者調査の対象となる区分がある

資格証の名称だけで判断せず、今回の対象が建築物か工作物か、工作物ならどの区分か、調査範囲が資格の対象内かを確認します。外構・設備が混在する場合は、必要に応じて複数資格者の関与を計画します。

未調査のまま着工したときは、確定前の作業を止める

  1. 対象部位の作業を中止する。切断、穿孔、研磨、破砕、撤去を進めず、未確定材料を損傷させない。
  2. 範囲を限定し、現状を残す。関係者以外の立入りを制限し、工事範囲、既に行った作業、材料の状態を写真・日報で記録する。
  3. 元請管理者と有資格調査者へ連絡する。無資格者が現場判断で試料を採取したり、見た目だけで「石綿なし」と決めたりしない。
  4. 既施工範囲を確認する。粉じんが発生した可能性がある場合は、所轄労働基準監督署、自治体、石綿対策の専門家へ相談し、必要な飛散防止・ばく露対応を決める。
  5. 調査、報告、契約、工程を是正する。追加費用と再開条件を文書化し、必要な措置が整うまで対象作業を再開しない。
一般の外構工事と同じ養生・集じんで続行しない
必要な隔離、湿潤化、集じん、保護具、廃棄物処理は、石綿含有材料の種類と除去方法で変わります。本記事だけで除去方法を決めず、調査結果に基づいて有資格者・専門業者と作業計画を定めてください。

発注・調査・施工の役割を着工前に分ける

発注者・所有者

設計図書、確認申請資料、改修履歴などを提供し、調査と適法な工事に必要な費用・工期・撮影へ配慮する。

元方・元請事業者

工事全体の対象範囲を統合し、事前調査、協力会社を含む結果報告、現場備付け・掲示、作業間調整を管理する。

石綿事前調査者

資格範囲を確認し、書面・目視調査、材料ごとの判定、分析要否、調査報告を技術的根拠とともに整理する。

下請・各職種

調査済み範囲と作業指示を確認し、現況相違や追加工事を見つけたら手を止め、元請へ報告する。

設計・積算・営業

見積条件に調査費、分析の可能性、結果による工程・費用変更、対象外範囲を明記し、短工期を前提に省略しない。

行政・専門家

労働安全衛生上の判断は所轄労働基準監督署、大気汚染防止法や条例は自治体窓口へ確認する。

印刷して使える着工前チェックリスト

  1. 見積・図面・現況で工事対象範囲が一致している
  2. 切断・穿孔・研磨・撤去する材料を部位ごとに列挙した
  3. 新築着工日と、その根拠書類を確認した
  4. 増改築・補修・設備更新の履歴を確認した
  5. 建築物と工作物の区分を整理した
  6. 対象外作業とする場合の根拠を記録した
  7. 調査者の資格が今回の対象範囲に適合している
  8. 設計図書等による書面調査を実施した
  9. 現地で材料を目視確認した
  10. 工事対象部分の全材料に判定が付いている
  11. 不明材料は分析または含有みなしを選択した
  12. 報告基準を面積・税込請負金額で確認した
  13. 必要な結果報告を着工前に完了した
  14. 発注者への説明内容と調査結果を保存した
  15. 現場備付け用の調査結果記録を用意した
  16. 掲示内容と掲示位置を確認した
  17. 協力会社へ調査済み範囲と禁止事項を共有した
  18. 追加工事時の中止・再判定・変更承認手順を決めた

石綿事前調査で迷いやすい実務FAQ

改修工事が税込100万円未満なら、事前調査は不要ですか?

不要とは限りません。税込100万円は建築物改修等の「結果報告」の基準であり、事前調査の対象判定とは別です。対象外作業に該当しない解体・改修であれば、金額が基準未満でも事前調査を行います。

木製ウッドデッキを撤去するだけでも調査が必要ですか?

木材と金属だけで構成され、周囲の材料を傷つけずボルトやビス等で容易に外せる作業は、対象外となる場合があります。ただし、既存外壁・軒天・基礎への切断や穿孔、仕上塗材の除去を伴う部分は分けて判定してください。

2006年9月以降の建物なら、何も調べなくてよいですか?

着工日が2006年9月1日以降であることを設計図書等で確認する方法が認められています。記憶や外観だけでは足りません。また、報告基準に該当すれば、石綿なしでも結果報告が必要です。

分析調査は毎回必要ですか?

毎回必須ではありません。書面・目視調査で石綿の有無を確定できない材料は、分析するか、石綿含有とみなして必要なばく露・飛散防止措置を講じます。「不明のまま石綿なし」と扱うことはできません。

2026年から、すべての工作物を工作物石綿事前調査者だけが調べるのですか?

一律ではありません。2026年1月1日以降着工の対象作業では有資格者調査が必要ですが、特定工作物とそれ以外で認められる資格の範囲が異なります。対象工作物の公式一覧と資格区分を照合してください。

工事中に追加の穴あけを頼まれた場合はどうしますか?

追加範囲の材料判定が済むまで、その部位の作業を始めません。事前調査範囲、報告要否、作業計画、費用・工期を再確認し、変更内容を文書化してから再開します。

現行ルールを確認する公的窓口

工事範囲のどこまで調査が必要か迷う場合

見積確定や着工日の前に、対象部位、作業方法、建築物・工作物の区分を整理し、資格範囲の合う石綿事前調査者へ確認してください。行政報告や条例の判断は、所轄労働基準監督署と工事場所の自治体窓口へ照会します。

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